抄録
遺伝性膵炎の病因遺伝子変異の同定により,発症の機序が分子レベルで解析されるようになった.蛋白分解酵素であるトリプシンやインヒビターなど,膵外分泌細胞で発現している遺伝子異常とともに,高脂血症,高Ca血症,有機酸血症など,膵外で過剰発現される物質の遺伝子変異が重要である.すべての遺伝子異常が遺伝性膵炎発症に関わるか不明であるが,Cationic trypsinogen(PRSS1)やKazal 1型(SPINK1)変異による変異トリプシンとインヒビターの関係より,プロセッシング障害,活性化亢進などの関与が考えられる.トリプシンの生理的阻害物質のα1-antitrypsin遺伝子変異の関与は不明である.