日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
103 巻, 8 号
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総説
  • 三輪 洋人
    2006 年 103 巻 8 号 p. 901-910
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    GERDは「胃食道逆流により症状や合併症が引きおこされる疾患」と定義される比較的新しい概念である.この中には内視鏡で食道炎がないのに症状がある「非びらん性胃食道逆流症NERD」,内視鏡的にびらんなどの粘膜障害が認められる「逆流性食道炎」,食道の円柱上皮化生をきたした「バレット食道」の三つのタイプの疾患が含まれる.これまでこのGERDの三つの疾患の病態は基本的に同様で,その逆流の程度が異なるだけと考えられていた.すなわちNERDは逆流性食道炎の軽症型であり,バレット食道は逆流性食道炎の重症型であるとの考えである.しかし,最近の研究から三つの疾患は食道内への酸逆流をその主な原因とするものの,その病態は基本的に異なっており互いの移行はむしろ少ないのではないかとの新しい考えが提唱され注目されている.
今月のテーマ;膵炎の発症と修復機構
  • 岡崎 和一
    2006 年 103 巻 8 号 p. 911-917
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    遺伝性膵炎の病因遺伝子変異の同定により,発症の機序が分子レベルで解析されるようになった.蛋白分解酵素であるトリプシンやインヒビターなど,膵外分泌細胞で発現している遺伝子異常とともに,高脂血症,高Ca血症,有機酸血症など,膵外で過剰発現される物質の遺伝子変異が重要である.すべての遺伝子異常が遺伝性膵炎発症に関わるか不明であるが,Cationic trypsinogen(PRSS1)やKazal 1型(SPINK1)変異による変異トリプシンとインヒビターの関係より,プロセッシング障害,活性化亢進などの関与が考えられる.トリプシンの生理的阻害物質のα1-antitrypsin遺伝子変異の関与は不明である.
  • 広田 昌彦, 藤村 美憲, 市原 敦史, 荒木 令江, 馬場 秀夫
    2006 年 103 巻 8 号 p. 918-923
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    PARは三量体G蛋白共役型7回膜貫通型のレセプターであり,細胞外のN末端がプロテアーゼによって特異的に切断され,切断されたN末端部(tethered ligand)がPAR自身の細胞外の第二のループに特異的に結合することによって細胞内にシグナルを伝達する.これらのPARは,多種多様な細胞の細胞膜上に発現されており,多くの重要な生体機能の調節に深くかかわっていることが明らかにされている.PAR,中でもPAR-2は生理的に膵腺房細胞,膵管上皮細胞に発現され,また,膵臓にはPAR-2の主アゴニストであるトリプシンが豊富に存在することから,膵疾患の病態にはPAR-2の活性化が深く関与している.急性膵炎と慢性膵炎の病態におけるPARの役割において紹介した.
  • 清水 京子
    2006 年 103 巻 8 号 p. 924-930
    発行日: 2006年
    公開日: 2006/08/07
    ジャーナル フリー
    膵星細胞は膵腺房周囲や血管周囲に存在する.静止期にはビタミンAを含む脂肪滴をもち,膵傷害により筋線維芽細胞様の活性化膵星細胞になり,酸化ストレス,炎症性サイトカイン,増殖因子,エタノール,アセトアルデヒド,アンギオテンシンIIなどによって細胞増殖,細胞外マトリックス産生,遊走能が亢進し,線維化が形成される.細胞内シグナル伝達にはMAPK系, Rho-ROCK系,PI3-kinase系,Smadの活性化,AP-1依存性転写活性などが関与する.活性化を抑制するものとして,細胞内シグナル伝達系の阻害剤,レチノール,PPARγ ligand,アンギオテンシンII阻害剤,抗酸化物質があり,これらは膵線維化の治療薬の候補である.
症例報告
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