2009 年 106 巻 12 号 p. 1712-1726
分子標的治療薬は近年,さまざまな腫瘍に対し臨床応用されているが,肝細胞癌においてもようやく,2009年5月にSorafenib(Nexavar®)が「治癒切除不能な肝細胞癌」としての適応を取得し,肝臓癌診療医にとって初の分子標的治療薬の使用が可能となった.現在,無作為化臨床第III相比較試験にて生存延長効果が証明され,承認されている分子標的治療薬はSorafenibしかないものの,Sorafenibを標準治療群とし他の分子標的治療薬とを比較する臨床第III相試験,VEGFRやPDGFRなどに対するmulti-kinase inhibitorやEGFR,IGFR,mTORを標的とした薬剤をはじめ,各種シグナル伝達に関わる分子をターゲットとした薬剤の臨床試験も行われている状況である.本稿では,肝細胞癌の発癌·進展に関わる主な経路と,それらをターゲットとした分子標的治療薬につき概説する.