2009 年 106 巻 3 号 p. 321-326
非ステロイド消炎薬(NSAID)ならびに低用量アスピリン(LDA)による消化管障害が,全国的に重篤な合併症を引きおこしていることが,日本消化器病学会における発表や各地域の論文で報告され,とくにNSAIDやLDAが消化管出血のリスクを高めることはわが国でも確認されている.これらの薬剤による重篤な消化管合併症をきたす患者の多くは高齢者であり,その予防対策が喫緊の課題となっている.この問題の重要性に鑑み,現在NSAIDやLDAの消化性潰瘍発症に対する予防試験が進行中である.本総説では,NSAIDならびにLDAによる消化管障害と予防に関するわが国の現状を述べ現段階で可能な対策について考察する.