日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
106 巻, 3 号
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総説
  • 菅野 健太郎
    2009 年 106 巻 3 号 p. 321-326
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/05
    ジャーナル フリー
    非ステロイド消炎薬(NSAID)ならびに低用量アスピリン(LDA)による消化管障害が,全国的に重篤な合併症を引きおこしていることが,日本消化器病学会における発表や各地域の論文で報告され,とくにNSAIDやLDAが消化管出血のリスクを高めることはわが国でも確認されている.これらの薬剤による重篤な消化管合併症をきたす患者の多くは高齢者であり,その予防対策が喫緊の課題となっている.この問題の重要性に鑑み,現在NSAIDやLDAの消化性潰瘍発症に対する予防試験が進行中である.本総説では,NSAIDならびにLDAによる消化管障害と予防に関するわが国の現状を述べ現段階で可能な対策について考察する.
今月のテーマ:機能性消化管疾患の病態と治療
  • 大島 忠之, 三輪 洋人
    2009 年 106 巻 3 号 p. 327-334
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/05
    ジャーナル フリー
    内視鏡的に食道粘膜に異常を認めないにもかかわらず逆流症状が出現する非びらん性胃食道逆流症(non-erosive reflux disease; NERD)は逆流症状を訴える患者の60∼70%を占め,プロトンポンプ阻害薬(PPI)の奏効率は50%と逆流性食道炎患者に対する効果とくらべて低率である.近年NERDは逆流性食道炎の軽症型ではなく,異なる病態と考えられ,食道の酸や圧に対する知覚過敏やタイトジャンクションの破綻,侵害受容体の発現亢進,食道運動·収縮異常,心理的因子などの関与が指摘されている.治療は,個々の症例において他疾患の除外,あるいはオーバーラップを考慮しながら酸分泌抑制薬,消化管運動機能改善薬,抗不安薬,抗うつ薬などの薬剤を選択する必要がある.
  • 金子 宏, 小長谷 敏浩, 後藤 秀実
    2009 年 106 巻 3 号 p. 335-345
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシアの症状は4つに絞られ,さらに食事との関係から2つのカテゴリー(食後愁訴症候群と心窩部痛症候群)が提唱された(Rome III).各カテゴリーに特異的な病態を明らかにし,理論的な治療法の確立が目標である.摂食に対する能動的反射である胃底部の適応性弛緩不全,続いて急激な胃排出による十二指腸刺激,結果的には胃排出の遅延をいう病態が,食後愁訴症候群を引きおこす説が有力である.不安状態にある患者への説明と保証が治療効果をもたらす.消化管運動賦活薬,酸分泌抑制薬の有効性が検証されているが,QOLの改善を目標とした良好な患者―医師関係に立脚した心身医学的アプローチが必要な疾患である.
  • 福土 審
    2009 年 106 巻 3 号 p. 346-355
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/05
    ジャーナル フリー
    機能性消化管障害(functional gastrointestinal disorders)は消化器の臨床場面で高頻度に遭遇する疾患群である.過敏性腸症候群(irritable bowel syndrome; IBS)はその概念形成の源流となった重要な症候群である.IBSの研究と臨床は,既知の生物学的診断マーカーが未発見である疾患の国際的診断基準作成,脳∼末梢臓器相関の概念化,脳機能画像の導入,ストレス病態からの関連物質の絞り込み,炎症と感作の関連,遺伝子と環境の関連,性差医学,薬物療法と心理療法の組み合わせなどの多くの点で他疾患に応用できる先進性を含んでいる.
原著
  • 金沢 秀典, 楢原 義之, 福田 健, 近藤 千沙, 張本 滉智, 松下 洋子, 城所 秀子, 片倉 玲樹, 厚川 正則, 滝 保彦, 木村 ...
    2009 年 106 巻 3 号 p. 356-369
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/05
    ジャーナル フリー
    難治性腹水50例(Child-Pughスコア9.8)に対しTIPSを行いその治療成績を前向きに検討した.平均追跡期間は592日であり,生存例における腹水改善率は1年96%,2年93%,累積生存率は1年71%,2年52%,5年18%であった.術後Child-Pughスコア,performance statusスコアは有意に改善し患者の生活の質(QOL)は向上した.術後短絡路狭搾が36例に生じ拡張術を必要とした.肝性脳症は26例に見られたが易治療性であった.TIPSは術後短絡路狭搾に追加治療を必要とするものの,難治性腹水を良く改善しQOLの改善が望めるが,5年生存率は依然低率であった.
症例報告
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