日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
今月のテーマ:消化器の生理と漢方
消化管運動と漢方
草野 元康栗林 志行保坂 浩子下山 康之前田 正毅河村 修財 裕明森 昌朋
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2010 年 107 巻 10 号 p. 1592-1603

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抄録

食道体部は食物塊の輸送が主な役割のため空腹期と食後期での違いはないが,下部食道括約部以下から大腸までの消化管は,両期で大きく運動様式が異なる.上部消化管では消化管のhouse keeping作用のための空腹期強収縮運動interdigestive migrating contractions(IMC)が1~2時間毎に繰り返され,この欠如によりbacterial overgrowthが生じる.食後期の胃では,食物を受け入れるための弛緩運動accommodationと消化のための撹拌運動が認められる.大腸には糞塊を貯留するための弛緩運動や逆蠕動,また肛門側へ運搬するための大蠕動giant migrating contraction,mass movementなど,各臓器で特徴的な運動が認められる.消化管に作用する漢方薬としては,胃排出促進作用やaccommodation促進作用のある六君子湯,小腸・大腸運動の亢進作用から便秘や術後イレウスに使用される大建中湯,消化管の運動抑制作用がある芍薬甘草湯や半夏瀉心湯などが使用されることが多い.

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© 2010 (一財) 日本消化器病学会
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