日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
107 巻 , 10 号
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総説
  • 新井 信
    2010 年 107 巻 10 号 p. 1577-1585
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    漢方とは古代中国に発祥して日本で発展した日本の伝統医学である.西洋医学が主に検査異常や器質病変に着目して治療方針を決定するのに対し,漢方では不快な自覚症状があれば治療の適応と考える.その体系は西洋医学とは根本的に異なるが,現在の日本では両医学が協調して独自の日本型統合医療を展開している.消化器疾患においては,特に機能低下症が漢方治療のよい適応である.消化器症状の改善が得られるだけでなく,長期的には気力や体力,水分代謝,脆弱な筋肉の質や量,出血傾向など,消化器以外の全身状態の改善も期待できる.実践では数多くの処方を使い分けるより,頻用処方に的を絞って使い込む方が治療技術の向上が見込める.
今月のテーマ:消化器の生理と漢方
  • 武田 宏司, 武藤 修一, 大西 俊介, 浅香 正博
    2010 年 107 巻 10 号 p. 1586-1591
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    機能性ディスペプシア(FD)治療に用いられる代表的な方剤である六君子湯は,食欲不振に対する効果を手がかりとして,そのユニークな作用機序の解明が進んでいる.六君子湯の作用機序としては,従来,胃排出促進および胃適応弛緩の改善が知られていたが,摂食促進ホルモンであるグレリンの分泌を亢進させることがごく最近明らかとなった.シスプラチンや選択的セロトニントランスポーター阻害薬(SSRI)投与は,消化管粘膜や脳内のセロトニンを増加させ,セロトニン2Bあるいは2C受容体を介してグレリン分泌を抑制することがその副作用の発現に関わっているが,六君子湯はセロトニン2Bあるいは2C受容体に拮抗してグレリン分泌を改善する.六君子湯のグレリン分泌促進作用は,FDに対する効果に関わっている可能性も示唆されている.また,六君子湯は高齢動物の視床下部でレプチンの作用と拮抗することにより食欲を改善させる機序も有しており,今後さらに多くの作用点が見出される可能性が高い.
  • 草野 元康, 栗林 志行, 保坂 浩子, 下山 康之, 前田 正毅, 河村 修, 財 裕明, 森 昌朋
    2010 年 107 巻 10 号 p. 1592-1603
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    食道体部は食物塊の輸送が主な役割のため空腹期と食後期での違いはないが,下部食道括約部以下から大腸までの消化管は,両期で大きく運動様式が異なる.上部消化管では消化管のhouse keeping作用のための空腹期強収縮運動interdigestive migrating contractions(IMC)が1~2時間毎に繰り返され,この欠如によりbacterial overgrowthが生じる.食後期の胃では,食物を受け入れるための弛緩運動accommodationと消化のための撹拌運動が認められる.大腸には糞塊を貯留するための弛緩運動や逆蠕動,また肛門側へ運搬するための大蠕動giant migrating contraction,mass movementなど,各臓器で特徴的な運動が認められる.消化管に作用する漢方薬としては,胃排出促進作用やaccommodation促進作用のある六君子湯,小腸・大腸運動の亢進作用から便秘や術後イレウスに使用される大建中湯,消化管の運動抑制作用がある芍薬甘草湯や半夏瀉心湯などが使用されることが多い.
  • 大島 忠之, 三輪 洋人
    2010 年 107 巻 10 号 p. 1604-1610
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    近年,機能性消化管障害に関心が高まり,その病態生理のひとつとして"内臓知覚過敏"が深く関わっていることが明らかとなってきた.侵害受容体や神経伝達物質が内臓知覚過敏に関与することが明らかとなる一方で臨床の場では効果的な治療薬がなく治療に難渋することも多い.漢方医学は,医学教育においても取り入れられ,六君子湯や大建中湯は非びらん性胃食道逆流症,機能性ディスペプシアや過敏性腸症候群にそれぞれ臨床効果を認めている.消化管知覚異常(特に内臓知覚過敏)に対する漢方薬の治療は,さらなるエビデンスの集積が必要であるが治療に難渋するこの知覚過敏に対する効果的な処方が明らかとなれば,臨床の場においても福音となると思われる.
座談会:消化器の生理と漢方
総説
  • 真弓 俊彦, 吉田 雅博, 平田 公一, 高田 忠敬
    2010 年 107 巻 10 号 p. 1623-1629
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/10/05
    ジャーナル フリー
    現在,種々の診療ガイドラインが作成されているが,ガイドラインの重要な目的である診療内容の標準化と患者の予後改善達成のため,ガイドライン流布のための種々の方策は不可欠である.また,ガイドラインに対する評価が必要で,現在まではAGREEなどのガイドライン作成法に対する評価が主であった.今後は,ガイドラインの有用性に基づく評価が必要と考えられ,そのためには症例登録などによってガイドライン内容と臨床効果が合致するか否かの検証が重要で,そのためのシステムの設置と整備が必要となる.また,遵守率なども分析のための因子として必須で,ガイドラインの有用性の評価のためには,臨床指標をあらかじめ提示することが好ましい.
症例報告
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