日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
今月のテーマ:消化管前癌病変の診断・取り扱い
胃の前癌病変
渡 二郎三輪 洋人
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2010 年 107 巻 11 号 p. 1759-1769

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抄録

胃癌,特に分化型胃癌の前癌病変は萎縮性胃炎と腸上皮化生(IM)と考えられている.一方,IMを前癌病変とするより,癌が発生する粘膜にはIMも発生しやすいとする傍癌病変との見方もある.IMには発癌に関連したさまざまな分子異常を認める.萎縮性胃炎とIMはH. pylori感染により発生し,これらの進展にともない胃癌発症のリスクは増加する.除菌治療により萎縮性胃炎と僅かではあるがIMも改善するが明らかなエビデンスはない.一方,未分化型胃癌のリスク病変として鳥肌胃炎と皺襞肥大型胃炎がある.これらもH. pylori感染にともない発生し,除菌治療によりその特徴的な肉眼所見も改善する.分化型と未分化型胃癌のいずれの発症にもH. pylori感染が深く関与しており,前癌病変が出現する前での早期の除菌治療が望ましい.

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© 2010 (一財) 日本消化器病学会
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