日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
107 巻, 11 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
総説
  • 八尾 隆史
    2010 年 107 巻 11 号 p. 1743-1751
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/08
    ジャーナル フリー
    一般に前癌病変(precancerous lesion)とは癌発生の危険性が有意に高い限局性病変のことを指し,ほとんどが腺腫や異形成(dysplasia)などの腫瘍性病変であり,上皮内癌(carcinoma in situ;CIS)とはいえない程度の異型性を示す上皮内腫瘍に相当する.消化管における前癌病変の代表的なものとして,食道では上皮内腫瘍(intraepithelial neoplasia;IN),胃では腺腫(腸型,幽門腺型)と過形成ポリープ,大腸では腺腫(管状,絨毛,鋸歯状,陥凹型)と潰瘍性大腸炎などの腸炎関連腫瘍(dysplasia)について,それぞれにおける病理組織学的特徴および癌化における意義を解説する.
今月のテーマ:消化管前癌病変の診断・取り扱い
  • 門馬 久美子, 藤原 純子, 立石 陽子, 吉田 操
    2010 年 107 巻 11 号 p. 1752-1758
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/08
    ジャーナル フリー
    食道の前癌病変を,"上皮内癌と診断するには異型度が十分でない所謂,異形成(dysplasia)"とするなら,食道の前癌病変は,新しい食道癌取扱い規約の食道上皮内腫瘍に含まれる.EMRにて全生検を行い,dysplasiaと診断された23例24病変(2007年「胃と腸」発表13例14病変,以後3年間の10例10病変)を対象に内視鏡診断について検討した.23例24病変の内視鏡所見から,前癌病変は軽度隆起(10例11病変),軽度陥凹(4例),平坦(9例)の3つに分類された.1)軽度隆起は白色調(10病変)と発赤調(1病変)があり,表面に微細な凹凸をともなうも全体的には平滑な丈の低い隆起.2)軽度陥凹は,NBI観察にてIPCLの増生がないBAとして観察されるが,通常の白色光だけでは発見困難.3)平坦は,ヨード染色にて拾い上げられた不整形のヨード不染.いずれの病変も,ヨード染色では不染を示すが,その表面はヨードに淡染していた.表面の淡染が前癌病変に見られる特徴的な所見と考える.前癌病変に対する臨床的取扱いは,1)ヨード不染の形態から癌を疑う,あるいは,10mmを超える不染は,全生検目的にEMR,2)癌とはいえない不染,あるいは,大きさが10mm未満の場合は,3~6カ月後に再検する.再検時は,拡大観察やNBI観察を行い,ヨード染色や生検は繰り返さない.
  • 渡 二郎, 三輪 洋人
    2010 年 107 巻 11 号 p. 1759-1769
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/08
    ジャーナル フリー
    胃癌,特に分化型胃癌の前癌病変は萎縮性胃炎と腸上皮化生(IM)と考えられている.一方,IMを前癌病変とするより,癌が発生する粘膜にはIMも発生しやすいとする傍癌病変との見方もある.IMには発癌に関連したさまざまな分子異常を認める.萎縮性胃炎とIMはH. pylori感染により発生し,これらの進展にともない胃癌発症のリスクは増加する.除菌治療により萎縮性胃炎と僅かではあるがIMも改善するが明らかなエビデンスはない.一方,未分化型胃癌のリスク病変として鳥肌胃炎と皺襞肥大型胃炎がある.これらもH. pylori感染にともない発生し,除菌治療によりその特徴的な肉眼所見も改善する.分化型と未分化型胃癌のいずれの発症にもH. pylori感染が深く関与しており,前癌病変が出現する前での早期の除菌治療が望ましい.
  • 斎藤 豊, 坂本 琢, 豊嶋 直也, 中島 健, 大竹 陽介, 松田 尚久
    2010 年 107 巻 11 号 p. 1770-1779
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/11/08
    ジャーナル フリー
    食生活の欧米化にともない,大腸癌(結腸癌・直腸癌)の死亡率は男女とも上昇を続けており大腸癌の予防が急務である.Morsonらのポリープ癌化説に基づき,大腸腺腫は内視鏡的に切除されてきた.米国の大規模臨床試験National Polyp Studyの結果からも大腸腺腫性ポリープを切除することで大腸癌死を抑制できる可能性が示唆されている.大腸腺腫の診断には,通常内視鏡観察に加え,拡大内視鏡を使用した色素内視鏡観察や,Narrow Band Imaging(NBI)といった画像強調観察が有効である.内視鏡切除の際には,腫瘍の大きさ,形態を考慮して最適の治療法(Hot biopsy,ポリペクトミー,EMR,ESD)を選択する.5mm以下の腺腫に関しての治療の必要性に関しては明確なコンセンサスは存在しないが,切除するのが一般的であるが,切除せずに,経過観察がされる場合もある.現在,多施設前向きランダム化比較試験(Japan Polyp Study;JPS)が国内で進行中であり,内視鏡治療が介入することによる大腸癌発生リスク軽減の可能性や,日本独自の内視鏡によるサーベイランス法の確立などが期待される.
症例報告
feedback
Top