2011 年 108 巻 9 号 p. 1546-1553
患者は60歳代の男性.検診の上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部に発赤調の腫瘤を認め,精査加療目的に紹介入院となった.精密検査でpancreas divisumを合併した早期乳頭部癌と診断した.十分なインフォームドコンセントのもと,内視鏡的乳頭切除術を施行した.乳頭部に対する内視鏡処置はSantorini管からの膵液流出に影響を及ぼさないと判断したため,膵炎予防を目的とした膵管ステント留置は行わなかった.術後膵炎などの偶発症はみられなかった.病理学的に11×8×4mm,露出腫瘤型,pat Adc,tub1,m,ly0,v0であった.pancreas divisumを合併した早期乳頭部癌では,進展度からの条件を満たせば内視鏡的切除術の良い適応で,膵管ステント留置も要さずに治療可能であると考えられた.