日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
108 巻, 9 号
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総説
  • 畠山 昌則
    2011 年 108 巻 9 号 p. 1505-1513
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    胃がんは全世界部位別がん死亡の第2位を占める主要なヒトがんである.近年の研究から,ヘリコバクター・ピロリ,中でもcagA遺伝子を保有するピロリ菌の持続感染が胃がん発症に重大な役割を果たすことが明らかとなり,cagA遺伝子産物であるCagAタンパク質の胃がん発症における役割を分子レベルで解明する研究に大きな注目が集められている.ピロリ菌体内で産生されたCagAは胃上皮細胞内に直接侵入し,細胞のがん化を促すさまざまな細胞内シグナル伝達異常を引きおこす.本研究では,初の細菌由来がんタンパク質であるCagAの胃上皮細胞内侵入プロセスならびに侵入したCagAが障害・撹乱する胃上皮細胞内シグナル系に関する最新の知見を概説する.
今月のテーマ:胃悪性腫瘍診療の新展開
  • 加藤 元嗣, 浅香 正博
    2011 年 108 巻 9 号 p. 1514-1520
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    食物と栄養による胃癌予防および胃癌に対する化学予防の成績が蓄積されてきた.わが国における胃癌予防対策として,これまで胃X線検査による二次予防が行われてきた.しかし,さまざまな問題を含んだ胃がん検診の在り方に見直しを行う時期に来ている.わが国の多施設共同の無作為化試験でH. pylori除菌の胃癌予防効果が明らかになってから,胃癌の一次予防が注目されてきた.わが国における胃癌撲滅のためには,一次予防としてのH. pylori除菌と二次予防としてのサーベイランスを組み合わせることが必要である.
  • 島田 安博
    2011 年 108 巻 9 号 p. 1521-1527
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    胃癌の化学療法は臨床試験成績の積み重ねにより着実に進歩し,生存期間の延長やQOLを改善している.術後補助療法ではS-1単独,切除不能進行再発癌にはS-1+CDDP療法が推奨される.分子標的薬ではHER2陽性例でのtrastuzumabの有用性が検証されている.今後は腹膜播種例,高齢症例,臓器機能低下例などに対する抗がん剤治療の臨床評価が必要である.また,術前化学療法により切除対象を拡大し治療効果を改善する試みも行われ,集学的治療が検討されている.手術成績が良好で安定している日韓での共同臨床試験などにより効率的な研究推進が期待される.
  • 杉山 敏郎
    2011 年 108 巻 9 号 p. 1528-1534
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/05
    ジャーナル フリー
    胃原発悪性リンパ腫では非ホジキンB細胞性リンパ腫が90%以上を占め,さらに胃MALTリンパ腫と胃びまん性大細胞型リンパ腫が大半を占める.頻度の高い胃MALTリンパ腫ではH. pylori除菌治療の著しい治療効果とともに複数の染色体転座が共通の細胞内情報系の異常に関与することも明らかになり,リンパ腫発生の新しい疾患概念が形成されつつある.びまん性大細胞型リンパ腫治療も標準治療(R-CHOP)がほぼ確立し,進行期であっても治療成績が著しく延長し,いずれも胃を温存する非外科的治療が主流となりつつある.一般には予後は良いが,組織型によって異なるので病理組織診断と臨床病期が重要となる.
症例報告
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