日本消化器病学会雑誌
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Print ISSN : 0446-6586
今月のテーマ:H.pylori感染症 ―最近の知見と診療の進歩―
NSAID潰瘍とH. pylori感染症
塩谷 昭子鎌田 智有春間 賢
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2012 年 109 巻 1 号 p. 54-59

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抄録

NSAID消化性潰瘍の発生には,胃酸分泌が重要な因子であり,胃酸分泌の低下あるいは抑制は潰瘍発生に抑制的に働く.H. pylori除菌は,NSAIDs内服開始前の潰瘍発生のリスクを低下させるが,長期NSAIDs内服例に対しては,潰瘍発生の予防効果はプロトンポンプ阻害薬(PPI)と比較して十分ではない.低用量アスピリンを含めNSAIDs継続投与が必要な潰瘍出血例に対しては,除菌の有無にかかわらず酸分泌を十分に抑制することが重要である.H. pylori感染とNSAIDsは互いに独立した潰瘍の危険因子であり,除菌治療のみでは,NSAIDsによる消化性潰瘍は予防できないことに注意すべきである.

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© 2012 (一財) 日本消化器病学会
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