過敏性腸症候群(IBS)の病態に内臓知覚過敏と消化管運動異常が関与し,この病態理解には脳腸相関の概念が非常に重要である.本稿では,脳腸相関の観点から,IBSの病態を概説した.内臓知覚過敏は最近の脳画像イメージングの進歩により,視床-島皮質-前帯状回という上行性内臓痛経路の活性化とそれを修飾する中脳中心灰白質などの下行性経路の機能異常が重要であることが明らかにされつつある.一方,消化管運動調節に関わる中枢機構は多くの分子が関与する可能性がある.その中でもオレキシンは消化管運動調節に加えて,IBS患者の多様な病態を一元的に説明しうることから,IBSの病態における脳内オレキシンの意義を考察した.