2015 年 112 巻 2 号 p. 270-277
症例は85歳,男性.大腸MALTリンパ腫と診断されたが,H. pyloriの除菌治療は無効で,無症状のため内視鏡的に経過観察していた.初診時より9年後,大腸病変の増大を認め,新たに胃と小腸にMALTリンパ腫を認めた.遺伝子解析ではAPI2/MALT1キメラ遺伝子が陽性で,胃と大腸病変は同一クローンであった.本症例はAPI2/MALT1陽性MALTリンパ腫の長期経過における多臓器浸潤例と考えられた.MALTリンパ腫では注意深い全身検索と長期にわたる経過観察が重要である.