食道扁平上皮癌は,飲酒や喫煙などに含まれる有害な化学発がん物質の摂取が原因で発症し,特に世界では東アジア・東アフリカに好発する.飲酒と喫煙は食道発がんの最も重要な環境因子であるが,近年はそれに加えいくつかの遺伝的要因,すなわちアルコール関連代謝酵素およびたばこに含まれる化学物質に対する代謝酵素の遺伝子多型が食道発がんに深く関与することが明らかとなっている.つまり,有害な化学発がん物質に対する解毒作用の低下した体質の人がこれらの摂取を続けると,食道にさまざまな遺伝子異常を生じ発がんに至るリスクが高まると考えられる.このように食道扁平上皮癌は外因的,内因的な要因に基づく化学発がんにより生じる疾患であるといえる.