日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
113 巻, 11 号
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総説
  • 千葉 勉, 妹尾 浩
    2016 年 113 巻 11 号 p. 1849-1856
    発行日: 2016/11/05
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー

    ヒトの遺伝子の解明が進んだ結果,「すべての疾患の発症に遺伝子異常が関与する」ことが明らかとなってきた.遺伝子異常に基づく疾患は,単遺伝子疾患(single gene disease)と多遺伝子疾患(polygene disease)に大別される.前者は酵素異常に代表されるような「遺伝病」で,メンデルの遺伝法則が根幹をなしている.このうち,機能獲得変異は優性遺伝,機能喪失変異は劣性遺伝形式をとるが,例外も存在する.一方後者は,多くの遺伝子多型が集積されて発症するもので,炎症性腸疾患,胆石症,アルコール性膵炎,NASHなどがこれに該当する.最近の研究の進展によって,これら単遺伝子疾患と多遺伝子疾患の境界がなくなりつつあるのが現況である.

今月のテーマ:消化管癌の発生・進展メカニズム
  • 大橋 真也, 武藤 学
    2016 年 113 巻 11 号 p. 1857-1867
    発行日: 2016/11/05
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー

    食道扁平上皮癌は,飲酒や喫煙などに含まれる有害な化学発がん物質の摂取が原因で発症し,特に世界では東アジア・東アフリカに好発する.飲酒と喫煙は食道発がんの最も重要な環境因子であるが,近年はそれに加えいくつかの遺伝的要因,すなわちアルコール関連代謝酵素およびたばこに含まれる化学物質に対する代謝酵素の遺伝子多型が食道発がんに深く関与することが明らかとなっている.つまり,有害な化学発がん物質に対する解毒作用の低下した体質の人がこれらの摂取を続けると,食道にさまざまな遺伝子異常を生じ発がんに至るリスクが高まると考えられる.このように食道扁平上皮癌は外因的,内因的な要因に基づく化学発がんにより生じる疾患であるといえる.

  • 牛島 俊和, 服部 奈緒子, 山下 聡
    2016 年 113 巻 11 号 p. 1868-1877
    発行日: 2016/11/05
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー

    突然変異やDNAメチル化異常が癌遺伝子パスウェイの活性化,癌抑制遺伝子パスウェイの不活化を通じて胃発癌に関与する全体像が明らかになってきた.そもそも,Helicobacter pylori感染は胃粘膜に慢性炎症を誘発し,胃粘膜上皮細胞でNF-κBを活性化する.その結果,activation-induced cytidine deaminase(AID)が発現誘導され,各種の突然変異が誘発される.また,DNAメチル化関連分子の異常も誘導され,DNAメチル化異常が誘発されると推測される.胃粘膜に蓄積したDNAメチル化異常の程度を測定することで,胃癌リスク診断も可能である.

  • 能正 勝彦, 須河 恭敬, 仲瀬 裕志
    2016 年 113 巻 11 号 p. 1878-1886
    発行日: 2016/11/05
    公開日: 2016/11/09
    ジャーナル フリー

    大腸癌は発癌経路が単一ではないため,分子異常に基づいて個々の経路を明らかにすることは有用な手法である.Serrated pathwayから発生するsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は,発生部位やBRAF変異・エピゲノム異常の頻度が高いことから,右側結腸のBRAF変異陽性癌の前癌病変と考えられている.また喫煙習慣や腸内常在微生物のFusobacteriumが同経路からの発癌に関与することが,最近の研究で明らかになりつつある.このように大腸癌の分子異常とそれに関わるライフスタイルや腸内微生物の統合的な研究は,その発生・進展の解明において更なる発展が期待される.

症例報告
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