2016 年 113 巻 11 号 p. 1878-1886
大腸癌は発癌経路が単一ではないため,分子異常に基づいて個々の経路を明らかにすることは有用な手法である.Serrated pathwayから発生するsessile serrated adenoma/polyp(SSA/P)は,発生部位やBRAF変異・エピゲノム異常の頻度が高いことから,右側結腸のBRAF変異陽性癌の前癌病変と考えられている.また喫煙習慣や腸内常在微生物のFusobacteriumが同経路からの発癌に関与することが,最近の研究で明らかになりつつある.このように大腸癌の分子異常とそれに関わるライフスタイルや腸内微生物の統合的な研究は,その発生・進展の解明において更なる発展が期待される.