腸は「単なる管」ではなく,全身を制御する「第2の脳」と呼ばれるなど,今後は「腸」の時代になると予想されている.炎症性腸疾患(IBD)では,粘膜治癒が重要であるという劇的な治療目標の変更があった.われわれは画期的な大腸上皮幹細胞の体外培養と培養細胞の移植に世界で初めて成功したことから,現在は再生医療によるIBDの根治療法の開発に着手している.この技術はIBDだけでなく,内視鏡検体から培養した細胞の機能解析により,全身の疾患に対する新しい個別化診断・治療法へ応用できることを示している.これから消化器科を目指す若い先生には単なる技術向上ではなく,腸からヒト全身を診るという新しい時代に踏み込むことを期待する.