2020 年 117 巻 10 号 p. 856-865
機能性ディスペプシア(FD)をはじめとした機能性消化管障害(FGIDs)には多くの共通する病態が存在し,症状を主体とする診断のため,症状の移行,消褪,疾患のオーバーラップが認められることが多い.FDは時間の経過により半数以上の症例で軽快あるいは治癒し,一部の症例では他のFGIDsへの移行や,再燃する場合もある.FDと胃食道逆流症(GERD),特に非びらん性GERDとのオーバーラップ率は20~60%と比較的高く,共通の病態として胃酸の関与が考えられている.また,FDと過敏性腸症候群(IBS)のオーバーラップ率もFD患者の30~60%と高くなっている.FDと慢性便秘との関係についての詳細な検討はないが,オーバーラップ率はおおむね10~20%程度と考えられている.