2022 年 119 巻 1 号 p. 30-38
アルコール性肝疾患に生じる肝不全は,緩徐に末期肝硬変への経過を辿る場合と,酒量の増加を契機に致死性の高いACLFを呈する場合がある.Sherlockが‘acute-on-chronic type’の典型と提唱したアルコール性肝硬変の急性増悪例は,1984~1986年の全国調査でわが国にも存在が確認された.診断基準(案)に準拠したACLFの全国調査が2018年に始まり,アルコール性肝硬変がACLF全体の50%以上を占め,診断後90日死亡率39.2%の実態が明らかとなった.しかし治療では,副腎皮質ステロイド投与はアルコール性の20.2%に留まった.詳細な臨床像の解析と治療法の検証が今後の課題である.