2024 年 121 巻 3 号 p. 197-203
直腸癌術後に排便機能障害で苦しむ患者は少なくない.欧米で開発されたtotal neoadjuvant treatmentは,術前化学放射線療法に全身化学療法を加えた強力な術前治療である.極めて高い病理学的完全奏効率が得られるため,臨床的完全奏効症例に対して積極的に経過観察を行い,手術を回避する戦略が広まりつつある.一方,MSI-H/dMMR大腸癌においては,免疫治療の高い奏効率を背景に,術前免疫治療による非手術治療の可能性が模索されている.両治療戦略とも現行の本邦大腸癌治療ガイドラインには記載されていないが,近い将来実臨床でも選択肢の1つとなり得るため,概略を知っておくべきである.