抄録
實験的ニ腎臟機能ヲ障碍シ、ソノ際ノ「インドール」新陳代謝ヲ究明セントシ血液並ニ膽汁中ノ「インドール」價ヲ檢索シ次ノ知見ヲ得タリ。(甲) 血液ノ「インドール」價ハ「ウラン」、昇汞、並ニ「クローム」腎炎ニ於テハ「インドール」ノ著明ナル増加停滞アリ。而シテ之等腎炎ノ初期 (輕症) ニ在リテハ「インヂカン」ノ形ニ於テ顯著ナル増加ヲ來スモ、時日ノ經ルユ連レ即チ腎炎ノ未期 (重症) ニ至リテ「インヂカン」ハ減少セルニ反シ遊離「インドール」ノ出現増加アリ。是ニヨリテ「インピール」ノ排泄ハ主トシテ細尿管機能ニヨルヲ知ルト共ニ、何レノ腎炎ニ於テモ其ノ排泄障碍ヲ來シ「インドール」ハ血液中ニ停滞スト雖モ、初期ニ在リテハ生體ハヨク之ヲ酸化合成スルニ反シ、末期ニ至レバ同時ニ可ナリノ肝臟機能ノ障碍ヲ伴フガ故ニ停滞セル「インドール」ヲ充分ニ酸化合成スル事能ハズ、タメニ生體ハ遊離「インドール」ノ中毒状態ニ陷ル可キヲ知レリ。(乙) 是等ノ腎炎時ニ於ケル膽汁中ヘノ「インドール」ノ排泄状態ヲ檢セルニ、其ノ濃度所見ハ略々血液所見ノ如クナルモ其ノ排泄量ハ正常時ニ比シ顯著ナル増加ヲ呈セリ。而シテ該排泄量ノ増加ハ其ノ排泄ノ濃度關係ニ於テ血液ニ甚ダシク從屬的ナルガ故ニ、之ヲ肝臟ノ營ム能動選擇的ノ排泄ナリトハ言ヒ難ク、寧ロ廣義ニ於ケル肝臟ノ腎臟代償作用ナリト呼ブベキモノナリ。而シテ前項血液變化ニ基因シテソノ際ノ肝臟障碍ノ輕微ナル場合ニハ主トシテ「インヂカン」ノ形式ニ於テ排泄スルモ、其ノ障碍ノ度ノ進ムニ從ヒテ「インヂカン」稍々減少シ之ニ代フルニ遊離「インドール」ノ増加ヲ以テセントスル傾向ヲ示シ、且ツ其ノ排泄量自身モ漸次ニ僅少トナリ、斯クテ遊離「インドール」ノ血中停滞ハ必然的ニ助長セラル、モノナルヲ知レリ。
