1971 年 68 巻 9 号 p. 907-922
近年消化器病領域の診断能は著しく向上し早期胃癌の発見も比較的容易になつて来た. しかしながら, 更に微細な悪性変化の診断が要求されて来ている. われわれは従来の内視鏡より拡大率の高い FGS-ML-II型を用いて観察を行なつてきたが, 更に走査型電子顕微鏡 (走査電顕) を用いて胃表面の観察と胃内有泡性粘液除去剤の効果を検討した. アカゲザルの切除胃を10%ガスコン溶液150mlで2回洗滌したものでは, 500倍, 1,000倍で胃小区, 胃小溝, surface epithelial cell の境界が明瞭に観察され, 3,000倍, 5,000倍では各細胞の表面上に400~500Åの顆粒状の小斑が散在して居り, microvilli と考えられるものが認められ, 又分泌顆粒と思われる小突起を多数持つた細胞も観察した. 又一回洗滌したものでは上記の観察は殆んど不可能であつたが, 胃内腔表面上には長さ6.0μ巾0.95μの紡錘状で表面がラセン状の, 所謂 Gastric Spirillum を明瞭に認めた.