日本消化器病学会雑誌
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胃粘膜の血流動態に関する実験的研究
磯部 賢士
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1974 年 71 巻 12 号 p. 1215-1228

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抄録

家兎を用いて竹内 (1965年) が腎の血流動態の研究に使用した, 標識赤血球及び小型G-M管を用いる方法によつて, 胃粘膜の血流動態を研究した.その実験成績から, この新しい・測定方法は現在まで測定困難であつた胃粘膜の局所における血流動態を知るには非常に有用であることを知つた.この方法と同時に血管弯縮の形態的所見として知られている動脈平滑筋周核空胞 (竹内) の出現状態から胃壁内の血流動態を検討した.対照群では胃体部に比較して幽門部の血流量は少ない.これは両部の血管構築の差異によるものと考える.
noradrenaline投与群では注入後著明な血流の減少を認め, 動脈内の周核空胞の出現率 (周核空胞の数/動脈平滑筋細胞の核数×100=%) は高値を示し, 血流量と周核空胞の出現率は逆相関を示し, 周核空胞が血管弯縮の形態学的所見であり血流動態の指標であることを示唆した.gastrin投与群では胃体部において著明な血流の増加をみるが, 幽門部では増加をみず, 又周核空胞の出現率も低く, gastrinがvasodilaterとしての働きがあるのではないかと考える.ランタン潰瘍作製実験において, ランタン注入後初期は血流量は少く虚血状態を示し, 12時間以後は上昇する.周核空胞の出現率もこの血流状態に逆相関する.この事は血管弯縮による胃粘膜の虚血が潰瘍形成の大きな要因となる事を示している.これらの結果より著者の施行した血流測定法は胃粘膜局所の血流動態を知るには非常に有用であり, 又周核空胞の出現状態の観察を組合わす事により従来不充分であつた胃粘膜の血流動態の解析がより精細に研究出来ると結論する.

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