1974 年 71 巻 3 号 p. 209-215
ICG試験とBSP試験の著明な解離を呈した症例は, われわれの2例を含めて現在までに9例の報告があるが, 今回さらに1例を経験したので, 前2例とともに電顕的考察を行なった.これら症例の共通した変化としては, Disse腔におけるreticulum fiberの増生, mitochondriaの腫大, 変形およびparacrystalline包入体の出現, 滑面小胞体の細分化と小円形状化, 粗面小胞体の層状構造の乱れと細分化および内腔の軽度の拡大, lipofuscinの出現などの見を認めた.
われわれはすでに本症例に「体質性ICG排泄異常症」の名称を提唱したが, 電顕的にみられた細胞内小器官の変化により, 本症の色素停滞の一部を解明することが出来るものと考え, また体質性黄疸との関連についても考察した.