1975 年 72 巻 2 号 p. 141-148
8家系に属する大腸ポリープ症11症例に対して, 胃透視•低緊張十二指腸造影•小腸透視•胃および十二指腸内視鏡によつて積極的に上部消化管の腫瘍性病変の有無を検索し, 病変を有する症例に対しては詳細な組織学的検討を加えた. その結果9例 (81.8%) に胃•十二指腸の病変が発見された. 内訳は胃•十二指腸ポリープ7例, 多発胃癌1例, 胃•十二指腸ポリープ•多発胃癌共存1例であつた. 小腸には病変を発見しえなかつた. なお1例において追跡検査によりポリープ悪性化の可能性を示唆する所見が得られた. 本症において大腸のみならず胃•十二指腸にもポリープや癌が発見されたことは, 本症の診断時ならびに大腸手術後における上部消化管精査の必要性を示すものであり, またこれらの病変が本症特有の全身性腫瘍形成素因の一端であることが示唆された.