日本消化器病学会雑誌
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姉妹に認められたRotor型過ビリルビン血症とその家系調査, ことにICG排泄試験を中心として
森下 玲児堂前 尚親内野 治人足立 幸彦
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1977 年 74 巻 12 号 p. 1759-1763

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抄録

同一家系の二姉妹にみられた体質性過ビリルビン血症について報告する. 二症例とも最初何ら自覚症状なく思春期に黄疸を認められ, 某院に精査の目的で入院している. 当時の妹 (発端者) の検査成績は肝機能検査は正常であるが, 総ビリルビン3.4mg/dl, 直接型ビリルビン2.6mg/dlと黄疸を認め, 肝生検の所見も肝細胞内に異常色素沈着はみられず殆んど正常であつた.当時の姉の検査成績は入手出来なかつた. 最近発端者である妹が近医で黄疸のため慢性肝炎の診断のもとに加療をうけていたが, はかばかしくないため本院内科を受診し, 種々の検査の結果Rotor型の体質性過ビリルビン血症と診断した. 今回この家系の詳しい検査を肝機能検査ならびにICG排泄試験を中心に行う機会を得たので報告する. Rotor型の体質性過ビリルビン血症は8人の兄弟, 姉妹のうち検索し得た7人のうち2人の姉妹にみられた. これら2症例でICG体重キログラムあたり0.5mgの静脈内投与後15分の停滞率はともに82.0%であり, その血漿消失率は同じく0.013と著明な遅延を示した. またBSPの45分後停滞率, 血漿消失率もともに高度の異常を示した. Dubin-Johnson症候群に特徴的な所見とされるBSPの再上昇現象も二症例とも認めなかつた. 家系調査では父親は死亡していて検査し得なかつたが, 他の家族では母親がICG15分停滞率が12.8%とやや高値を示した以外, 肝機能検査, ICG停滞率ともすべて正常であつた. この母親は既往歴に肝炎に罹患した事実もないため, Rotor症候群のHeterozygoteの可能性もあるが, その証拠は得られなかつた. Rotor型体質性黄疸のICG排泄異常について考察を加えた.

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