抄録
胸部手術74例, 腹部手術56例およびその他の手術162例の計292例を対象として, 術後高アミラーゼ血症の性質を検討した. 292例中56例 (19.2%) に術後高アミラーゼ血症が認められ, その内膵型高アミラーゼ血症は6例 (10.7%) であり, 膵に直接侵襲を加えた症例に限られた. 一方, 唾液腺型高アミラーゼ血症は50例(89.3%) に認められ, 胸部手術および胸, 腹部以外の手術後の高アミラーゼ血症の全例がこれに属した.胸部手術, 特に体外循環による開心術例では, 術後高アミラーゼ血症の頻度も高く, 血清アミラーゼ活性上昇の程度が他の手術例に比して有意に高値を示し, 肺組織抽出液中に認められた唾液腺型アミラーゼの関与が強く示唆された. Cam/Ccr 比は膵型高アミラーゼ血症では術後有意に上昇したが, 唾液腺型高アミラーゼ血症では手術前後で有意な変化を示さなかつた.