日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
わが国におけるアルコール性肝障害の実態
全国集計の成績から
武内 重五郎奥平 雅彦高田 昭太田 康幸藤沢 洌伊藤 進辻井 正蓮村 靖
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1979 年 76 巻 11 号 p. 2178-2185

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抄録

わが国の肝疾患の病態の特徴を反映し,臨床的に広く使用できるようなアルコール性肝疾患(脂肪肝,肝炎,肝硬変,および肝障害)の診断基準案を提示した.次いで,近年のわが国におけるアルコール性肝疾患の実態を把握する目的で,1968年から1977年までの10年間を調査対象に,この基準に合致した症例を全国の病院内科94施設からアンケート方式によつて集め解析した.その結果,肝疾患による入院患者のすべての症例のうち,アルコール性肝疾患症例の占める割合が1968年の5.1%から1977年10.7%へと直線的に有意に増加したこと,さらに肝硬変の入院症例のうちアルコール性肝硬変の占める割合も有意な増加をみた結果,1977年には16.9%であつたことが判明した.この成績は,わが国でもアルコールに起因した肝疾患に充分注目する必要があることを示している.

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