1979 年 76 巻 11 号 p. 2252-2262
悪性化例1例を含む4例のインスリノーマにおいて,インスリン分泌動態と腫瘍組織中IRI濃度ならびに形態学的所見の対比を行つた.インスリン基礎分泌が低く,各種刺激によるインスリン追加分泌が亢進していた1例では,腫瘍組織中IRI濃度が高く,電顕像で定型的β粒が認められた.またインスリン基礎分泌が亢進していた2例では,インスリン追加分泌は,1例は高反応を,もう1例は低反応を示した.しかし2例とも腫瘍組織中IRI濃度は低く,また電顕豫でも非定型的穎粒を認めた.一方,インスリン基礎分泌が亢進し,インスリン分泌刺激には反応しなかつた1例では,腫瘍組織中IRI濃度は高値を示し,定型的β穎粒がみられた.