抄録
ヒト切除胃を用い,腸上皮化生について吸収上皮細胞における形態と機能との関連性を,alkaline phosphatase(以下ALP),adenosine triphosphatase(以下ATPase)を指標として酵素組織化学的に検討した.光顕的には,腸上皮化生はALP活性のある完全型と活性のない不完全型に分類され,同じ完全型でも腺管単位で活性が著しく異なることが認められた.電顕的には,完全型では粘膜表層の吸収上皮細胞の微絨毛は密で背が高く,強い活性があり,不完全型では,まばらで背が低く,活性がみられなかつた.しかし完全型化生粘膜の同一腺管においても,微絨毛での活性が著しく異なる細胞が相隣接する所見が認められた.以上の結果より腸上皮化生は形態学的にみても,また小腸指標酵素の発現の機能的立場からみても,種々の型があり,細胞分化の異常が起きている可能性が示唆された.