1980 年 77 巻 10 号 p. 1625-1634
膵管結紮により膵外分泌機能が遮断され膵線維化が進行するにつれて,膵血行動態はいかに変貌するのかを検索するために,水素ガスクリアランス式組織血流計を用いて膵基礎血流量を,交叉熱電対式組織血流計を用いてVIP及びセクレチン刺激による膵血流反応をそれぞれ観察した.単位膵重量当りの膵基礎血流量は,高度線維化膵においてもなお正常膵と同じくらいに十分維持されていた.VIPは高度線維化膵においても比較的良好な血流増加反応を保つていたが,セクレチンは軽度線維化膵においてすでに血流増加反応をほとんど消失していた.線維化が高度に進行しても,十分な膵基礎血流量と,VIP等による良好な血流反応により,ラ氏島よりのホルモンが門脈血中へと流出していくと思われた.