1980 年 77 巻 12 号 p. 1948-1954
肝性脳症患者11例にglucagon-insulin(G-I)療法を行い,本療法の有効性を検討した.G-I療法で救命効果は6/11例,意識覚醒効果は9/11例に認められ,覚醒までの治療日数は平均3.7日であつた.肝性脳症改善前後の血中アンモニアを比較すると,意識覚醒例では56%の減少が認められ,肝機能検査では劇症肝炎において著明なGOT, GPT改善作用があつた.さらにG-I点滴静注前後3時間で,肝性脳症患者ではアンモニアの急速な減少を認め,総アミノ酸値は正常対照,肝硬変症および肝性脳症患者すべてに減少が認められ,BCAA/AAA比はG-I点滴静注により変動した.以上よりG-I療法は従来の治療法に劣らない極めて有効な治療法であり,本療法の作用機序について文献的考察を加えた.