日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
大腸腫瘍の免疫組織化学的研究
secretorycomponent, IgAを中心に
浅井 俊夫名倉 宏渡辺 慶一
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1981 年 78 巻 7 号 p. 1388-1398

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抄録

大腸の腫瘍性病変にNakaneの酵素抗体法直接法によるSC, IgA染色を行い,光顕および電顕的に検討した.SCは陰窩円柱上皮の分化を表現する指標となり,腺腫の未熟性と過形成ポリープの過成熟が示されたが,これらの上皮の超微形態レベルでのSCの局在は正常腸上皮と同様であつた.腺癌ではSCは光顕での高度に不規則な染色性と同時に,超微形態レベルで管腔内微絨毛表面の局在と間質への拡散が認められ,局在様式からも悪性腫瘍における極性の喪失が示された.成熟した杯細胞にSCは存在しなかつたが,腺腫の未熟な杯細胞にはSC産生の可能性が示唆された.腫瘍化しても腸上皮のdimeric IgAのtransport機構は保たれていたが悪性腫瘍ではtranSCellular transportの機能低下が示された.

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