1981 年 78 巻 8 号 p. 1613-1617
慢性肝疾患患者の肝組織過酸化脂質値と血清過酸化脂質値を測定し,両過酸化脂質値の間の関連を各肝疾患で検討した.両過酸化脂質値の間に相関関係の認められる疾患と認められない疾患があつた.正常肝,アルコール性脂肪肝,慢性非活動性肝炎ならびに血清アルブミン値が正常の肝硬変のいずれの患者でも血清過酸化脂質値が肝組織過酸化脂質値に正の相関関係を示した.このことから肝の過酸化脂質が血液中へ分泌されていることが推測された.他方,低アルブミン血症を呈した肝硬変患者や肝の炎症が著しい慢性活動性肝炎患者では両過酸化脂質値の間に相関関係が認められなかつた.アルコール性脂肪肝患者では肝組織過酸化脂質値の著しい上昇があり,アルコール性肝障害への関与が考えられた.