1982 年 79 巻 10 号 p. 1944-1949
大腸癌スクリーニングのために,抗ヒトヘモグロビンAo抗体(anti-HbA0)を用い,counter immunoelectrophoresisを応用した便潜血反応を考案した.anti-HbA0は免疫学的方法でヒトHbA0に対する特異性を確認し用いた.この抗体は臨床の糞便検体でも特異性が高く,消化管に出血性病変のない11症例および健常者24例で反応はすべて陰性であった.一方,ヘモカルトテストおよび精製しない溶血液で作製した抗体(anti-cHb)では偽陽性があった.anti-cHbは赤血球非ヘモグロビン蛋白に対する抗体を含み,偽陽性は糞便中のこの非ヘモグロビン蛋白によることが明らかとなつた.したがつて,免疫学的便潜血反応には精製ヘモグロビンに対する特異的抗体が必要である.