1982 年 79 巻 5 号 p. 1106-1114
潰瘍性大腸炎の粘膜真性毛細血管を透過電顕で観察し,各種腸疾患を対照として主にmorpho-metricに比較検討した.活動期では毛細血管内皮細胞の著明な肥厚や風船状突出が見られ毛細血管の抵抗性は増加しており,また血管腔内に赤血球を認めることが少ないことより血流も少なくなつて微小循環不全状態にある.この状態は難治性を示す一因となつていると考えられる.さらに内皮細胞では飲小胞数は減少し機能低下状態にあり,また基底膜は多層化しており内皮細胞の変性,再生が繰り返しおこつている.緩解期ではこれらの変化は活動期と過敏性大腸症候群の間に位置しており,何らかのtriggerが加われば再燃しやすい状態にあると考えられる.