1984 年 81 巻 1 号 p. 7-15
胃癌の進展が胃液酸度によりどのような影響を受けるかを実験的に検索した. 体重100~120gのwistar 系雄性ラットに N-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine を50mg/lの濃度に溶解した飲料水を20週投与し, 腺胃粘膜癌を作成した. このラットを, 胃底腺領域切除で無酸胃液にすると, 50週での粘膜下層以下に浸潤する胃癌の発生率は67%で, 対照の20%に比べ3.4倍と増加した. また, depot form の AOC-tetragastrin 2,000r/kg b.w. を連日10週にわたり皮下注射し高酸胃液にすると, 50週での胃癌発生率は対照と差異をみるに至らないものの, 腫瘍径は5±3mmで, 対照の19±10mmに比べ小さかつた. 以上の成績は胃癌の進展は胃液酸度に影響され, 無酸で促進, 高酸で抑制されることを示している.