日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
肝硬変症における Big Plasma Glucagon
特異抗体 (30K及びOAL-123) による測定値の相違について
坪内 博仁上別府 篤行藤崎 邦夫岡 春己宮崎 博臣弘野 修一橋本 修治永浜 重遠合田 栄一大工原 恭
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キーワード: 肝硬変症
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1984 年 81 巻 5 号 p. 1208-1213

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抄録

肝硬変症における 30K-IRG と OAL-IRG の差の原因を明らかにするために肝硬変症11例, 健常者3例の血漿をゲル濾過し, glucagon heterogeneity を検討した. 又, 30K-RIA 系に影響を与えるグリココール酸と glucagon heterogeneity との関係についても検討し次の結果を得た.
(1) 健常者, 肝硬変症のいずれでもIRG3500画分では, 30K-IRG, OAL-IRG の両者は, 相関係数r=0.978で強い相関を示した (p<0.001). また回帰直線はY=1.07X-17.8であつた.
(2) 30K-IRG, OAL-IRG のほぼ一致した健常者, 肝硬変症ではいわゆる"Big Plasma Glucagon (BPG)"もほぼ一致した値を示した. 一方, 30K-IRG, OAL-IRG の差がみられる肝硬変症では, その差はIRG3500画分ではなくBPG画分に起因した.
(3) 血漿に添加したグリココール酸はBPG画分には一部しか溶出されず, そのほとんどがグリココール酸自身の分子量に一致して溶出された. 肝硬変症の血漿でもグリココール酸はその分子量の部位に認められ, BPG画分にはほとんど溶出されなかつた.
これらのことはIRG3500画分では30K-IRG, OAL-IRGは一致しており, 30K-IRG と OAL-IRG の差はBPG画分に存在すること, そのBPG画分の差に血中胆汁酸の関与がないことを示している. このBPG画分における30K-IRGとOAL-IRGの差については, その画分に含まれる血漿成分とそれぞれのRIA系との interaction によつているものと思われるが, BPG画分の本態について更に検討が必要である.

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