日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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デキストラン硫酸投与による実験的潰瘍性大腸炎の作成と腸内菌叢の変動に関する研究
大草 敏史
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1985 年 82 巻 5 号 p. 1327-1336

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抄録

高分子デキストラン硫酸 (DSS; 分子量54,000) の5及び10%溶液を飲水としてハムスターに連日投与することにより, 盲腸, 大腸, 直腸に病理組織学的にヒト潰瘍性大腸炎類似病変を作成しえた. 5%DSS投与群 (10匹) では投与後平均9.1日, 10%DSS投与群 (10匹) では平均4.6日で全例に下痢, 粘血便, 下血が出現し, 病理所見では全例にびらん又は潰瘍, 16匹に腺窩膿瘍を認めた. 粘膜間質の炎症性細胞浸潤はいずれも中等度~高度であった. 腸内菌叢の変化を検討した結果, Bacteroidaceae, Enterobacteriaceae の有意な増加, Lactobacilli の有意な減少を認めた. 他の偏性嫌気性菌群が減少又は不変であつたにもかかわらず, Bacteroidaceae のみ有意に増加したことは, 潰瘍性大腸炎様病変発生に本菌群がDSSと協同的に関与する可能性を示唆した.

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