1985 年 82 巻 5 号 p. 1327-1336
高分子デキストラン硫酸 (DSS; 分子量54,000) の5及び10%溶液を飲水としてハムスターに連日投与することにより, 盲腸, 大腸, 直腸に病理組織学的にヒト潰瘍性大腸炎類似病変を作成しえた. 5%DSS投与群 (10匹) では投与後平均9.1日, 10%DSS投与群 (10匹) では平均4.6日で全例に下痢, 粘血便, 下血が出現し, 病理所見では全例にびらん又は潰瘍, 16匹に腺窩膿瘍を認めた. 粘膜間質の炎症性細胞浸潤はいずれも中等度~高度であった. 腸内菌叢の変化を検討した結果, Bacteroidaceae, Enterobacteriaceae の有意な増加, Lactobacilli の有意な減少を認めた. 他の偏性嫌気性菌群が減少又は不変であつたにもかかわらず, Bacteroidaceae のみ有意に増加したことは, 潰瘍性大腸炎様病変発生に本菌群がDSSと協同的に関与する可能性を示唆した.