1987 年 84 巻 6 号 p. 1295-1303
赤外線吸収スペクトルを用いて黒色石の分析を行ない, さらに人工的に黒色色素を生成し黒色色素の重合機構を実験的に検討した. また, 黒色石に高頻度に含有される炭酸カルシウムの析出についても実験的に検討した. 黒色石の黒色色素は赤外線吸収スペクトル上, 合成ビリルビンカルシウムと吸収帯の位置が等しく, スペクトル全体の傾向も同じで吸収強度にのみ違いを認めた. このことより黒色色素は, ビリルビンカルシウムと基本的構造を同じくするビリルビンカルシウムの重合体と考えられた. さらに, 合成ビリルビンカルシウムより in vitro (アルカリ性溶液) で生成した黒色色素は, その諸性質及び赤外線吸収スペクトルが黒色石の黒色色素に極めて類似していたことから, ビリルビンカルシウムはアルカリ性溶液で長時間かけて重合し黒色色素を生成するものと推察された.