1987 年 84 巻 9 号 p. 1764-1771
B型慢性肝炎118例を, HBe抗原陽性群85例, HBe抗体陽性GPT異常群16例, HBe抗体陽性GPT正常群17例の3群に分け, HBe抗体陽性GPT異常群の病態を知る目的で, HBVマーカーおよび経過を観察した. 血中HBV-DNA陽性率はそれぞれ99, 91, 0%, DNA-P陽性率は95, 94, 0%, 肝HBc抗原陽性率は51, 20, 0%であつた. 経過追跡例中, HBe抗原陽性群の94%, HBe抗体陽性GPT異常群の82%で, 肝炎の増悪に先行して, HBV-DNA, DNA-P増加を認めた. HBe抗体陽性GPT異常群は, 31%の症例でGPTが正常化したが, GPT異常が持続した4例中3例は, 肝硬変へ移行し, 2例で肝機能不全に陥つた. HBe抗体陽性GPT異常群の肝炎増悪にはHBV増殖が関与しており, 厳重な経過観察が必要である.