1988 年 85 巻 10 号 p. 2193-2196
ロイコトリエンB4およびC4 (LTB4 LTC4) は, 炎症とアレルギー反応を惹起する chemical mediator である. ロイコトリエンの肝における代謝を調べる端緒として, ラット肝組織中LTB4と LTC4の検出を試みた. Wistar 系雄性ラットを開腹後ラット肝組織を採取して, 高速液体クロマトグラフィーとラジオイムノアッセイで肝組織中のLTB4とLTC4を定量した. その結果, 正常ラットの肝組織中に, LTB4とLTC4を検出し得た. また, Propionibacterium acnes (P. acnes) 加熱死菌を静注して肝にP. acnes-elicited macrophage を浸潤させると静注一週後の肝組織中LTB4とLTC4は減少した. しかし, P. acnes 処置ラットにLPSを静注して急性肝細胞障害を誘導するとLTB4 LTC4は有意に増加した. 今回の結果から, ラット肝組織中にはLTB4とLTC4が存在することが明らかになるとともに, 肝組織中ロイコトリエンの増加が, 肝細胞障害の誘導に何等かの関与をするものと推則された.