日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
原発性胆汁性肝硬変患者の予後と経過の予測
多変量解析による検討
井上 恭一佐々木 博康山 俊学樋口 清博成瀬 優知松原 勇岡 博戸田 剛太郎
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1989 年 86 巻 4 号 p. 889-896

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抄録

原発性胆汁性肝硬変 (PBC) 患者の予後と経過の予測をPBC全国調査453症例を対象に多変量解析により行つた. 3年および5年生存に有効に働く因子としては, 初診時の血清ビリルビン値1.5mg/dl未満, アルブミン値3.5mg/dl以上, 食道静脈瘤なし, 男性患者, 診断時の年齢50才以上, 抗糸粒体抗体(anti-mitochondrial antibody AMA) 陰性などで3年生存および5年生存の判別率は良好であつた. 肝疾患に由来する症状を示さない無症候性PBC (asymptomatic PBC a-PBC) から皮膚掻痒感あるいは黄疸などを伴う症候性PBC (symptomatic PBC s-PBC) への移行の予測の判別率は悪く, これはa-PBCとs1-PBC (s-PBC の中で皮膚掻痒感のみの例) が類似しているためと考えられた. a-PBC, s1-PBCの発黄予測についてはビリルビン値1.5mg/dl以上が大きな要因となり, この値を越えると発黄が近いことを予測させたが, 判別率は100%には至らなかつた.

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