1989 年 86 巻 6 号 p. 1281-1286
B型肝炎ウイルス感染者における血中Pre-S1抗原•抗体の発現をPre-S1領域の部分ペプチドおよびこれに対するモノクローナル抗体を用いELISA法で定量的に検討した. 血中Pre-S1抗原価とHBs抗原価には有意の相関関係を認めた. e抗原, HBV-DNA, DNAポリメラーゼ陽性血清でPre-S1抗原価は高値を示したが, Pre-S1抗原価とHBs抗原価の比については, これらウイルス増殖マーカーとの関連は認めなかつた. またGPT高値を示す慢性活動性肝炎の中に同比が高値を示すものがみられ, 肝組織障害との関連が示唆された. 慢性感染者でのPre-S1抗体検出率は低く, 持続感染成立に関与する可能性も考えられた.