日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
迷走神経背側核へのカイニン酸注入による実験的胃潰瘍の研究
奥村 利勝岡村 毅与志柴田 好並木 正義
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1989 年 86 巻 8 号 p. 1597-1603

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抄録

ラット迷走神経背側核 (DMN) に神経細胞の長時間興奮性物質であるカイニン酸を注入し, その胃潰瘍形成におけるメカニズムを検討した. またDMNに逆行性標識物質であるHRPを注入し, DMNに投射する上位中枢を同定した. DMNへのカイニン酸注入24時間後には高率に胃潰瘍が形成され, その場合の ulcer index は10.2±6.5 (mean±SD) mm であつた. 潰瘍性病変部は組織学的に erosion であり, 胃粘膜内の粘液量が著しく減少していた. HRP標識細胞は延髄から大脳皮質の広範囲に分布し, 主な部位としては延髄網様体, 視床下部諸核とくに室傍核, 扁桃核, 大脳皮質, 小脳室頂核であつた. 以上の結果よりDMN細胞群の持続的興奮は潰瘍形成に促進的に作用すること, その形成過程には胃粘膜内の粘液量の低下が関与すること, このDMN細胞群の持続的興奮は情動•ストレスに関与する大脳皮質•視床下部•扁桃核などからの入力による可能性などが示唆された.

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