日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
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微小膵内分泌腫瘍の臨床病理学的研究
剖検例による検討
木村 理黒田 慧森岡 恭彦
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1990 年 87 巻 5 号 p. 1191-1202

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抄録

高齢者主体の剖検例800例を用い, 膵内分泌腫瘍について臨床病理学的検討を行つた. その結果, 1) 24例25病変に内分泌腫瘍あるいは類似病変が認められた. このうち20例, 20病変は腫瘍と判定され, 5例5病変は過形成と判定された. 2) 腫瘍の頻度は全割群では10% (6/60), 3切片群では1.6% (12/738) であつた. 800例中肉眼的に確認できた内分泌腫瘍は1例 (0.13%) であつた. 3) 腫瘍の大きさは, 3000μm以下が85%を占めた. 過形成性病変の大きさはいずれも1000μm以下であつた. 4) これらはいずれもホルモン過剰症状を示さないものであつた. 5) 免疫組織化学的検索では, 腫瘍すべてにホルモン産生がみられ, 14病変 (70%) に複数のホルモン産生が証明された. 5) 膵管あるいは腺管構造が腫瘍あるいは過形成巣内あるいは辺縁にみられたのはそれぞれ12病変(60%), 1病変 (20%) であつた. 6) 腫瘍3病変 (15%) の周囲には500μm以上のラ島が認められ, さらに腫瘍5病変 (25%), 過形成3病変(60%) の周囲に, mean+2SD以上の径を有するラ島がみられた. 以上より, 膵内分泌腫瘍は高頻度に存在し, しかもその大多数はホルモン産生能を有してもその過剰症状を示さない無症候性腫瘍に留まると考えられた. また, 内分泌腫瘍あるいは過形成のなかには膵管上皮内の, 多分化能を有する幹細胞を発生母地にするものがあること, さらにラ島の増生を促す何らかの因子が介在する可能性があることが示唆された.

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