1990 年 87 巻 7 号 p. 1544-1550
膵臓癌切除標本の癌部および膵炎, 正常膵組織について上皮増殖因子 (EGF) とそのレセプター (EGFR) の免疫組織化学的検討を行つた. 対象はヒト膵臓癌25例で, そのうち13例はリンパ節転移巣も検索した.
EGF, EGFR陽性例は各々18/25 (72%), 9/25 (36%) で, EGFR陽性例はすべてEGF陽性を示した. EGF, EGFR陽性例は分化型や原発巣に高率にみられ, 肉眼所見でT1の2例はEGF, EGFRいずれも陰性で, Stage II群より Stage III+IV群でEGF, EGFRの陽性率が高かつた. 特にEGFは, 分化型や進行例で有意な差がみられた. 以上より, 膵癌細胞の増殖, 分化にもEGF, EGFRが関与し, 転移には他の機構も働いている可能性が示唆された.