1991 年 88 巻 5 号 p. 1221-1230
膵頭十二指腸領域癌40例(乳頭部癌11例, 膵頭部癌12例, 下部胆管癌17例)における, Lewis(Le) 血液型物質関連抗原とシアリル Tn 抗原の発現状況をモノクローナル抗体を用い, 健常組織も含めて免疫組織学的に検討した. 十二指腸粘膜の杯細胞以外の部位ではほぼ陰性であるTKH-2 (抗シアリル Tn抗体)が, 3系統の癌においてかなりの陽性率を示したので, シアリル Tn 抗原はこの領域の癌の有力な腫瘍マーカーになりうると考えられた. また, Lex, シアリルLex-i は, 従来言われていた膵癌よりも下部胆管癌のマーカーとしての有用性が示唆された. そして, 膵, 下部胆管癌におけるこれらの抗原の発現は糖転移酵素の活性の regulation の異常によるものと推察された.