日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
島根県八束町におけるHCV抗体の疫学調査
周防 武昭生田 裕次郎長谷川 真弓川崎 寛中
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1992 年 89 巻 4 号 p. 1173-1178

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抄録

肝炎多発地区である鳥根県八束町においてHCV感染と慢性肝疾患の発生との関連を明らかにするため, 八束町の肝硬変, 肝癌死亡率を調査するとともに, 八束町の459人と, 性, 年齢を一致させた肝炎非多発地区美保関町の219人についてHCV抗体測定を含めた疫学調査を行つた. 八束町の肝硬変死亡率は島根県全体の3倍であり, 肝癌死亡率が近年増加していた. 八束町の住民検診で11.5%に肝障害があり, 美保関町の3.7%に比し有意に高率であつた (P<0.01). HBs抗原, 常習飲酒者の頻度は両地区間で差がなかつたが, 八束町のHCV抗体陽性率は16.6%と美保関町の3.7%に比し有意に高かつた(P<0.001). したがつて, 八束町ではHCVキァリアーが高頻度にみられ, このため慢性肝疾患とくに肝細胞癌が多発していると推測された.

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